ある休日の朝のお話。前の晩、珍しく夜更かしした僕はベッドから8時半頃まで抜け出せずにいた。ようやく身体を起こし窓辺の方に目をやると、昨晩までは無かったはずの変なものが置いてあった。
いったいなんだこれは。
リビングにいくと息子がいて、妻の居所を聞くと朝食を作ってるとのこと。そしてソファーに座ろうとした僕を一冊の本が妨げた。
どうやらまた妻が何かを始めたようだ。
はっきり言っておくが、彼女はこういったものを育てるのに向いてないと思う。というか何かを育て上げたのをみた記憶が無い。
プレゼントでもらった花などはきちんと枯れるまで管理しているみたいだが、それでもきちんと天寿を全うさせることが出来たのかを僕は疑っている。
というのも、彼女は子どもの頃に亀を飼ったらしい。それを夏休み期間、水を与えなかったそうだ。理由は飼っていたこと自体を忘れてしまい、思い出したのは夏休みも終わりに差し掛かったあたり。
それを彼女はいまだに悔いている。部屋で一人「ごまちゃん(亀の名前)、ごめんね」と呟きながら懺悔しているのを見た。
というか、僕から言わせれば生き物を飼っていることを忘れるなんてことが信じられない。たぶん、これを読んでいるあなたも信じられないと思う。
だがしかし、彼女はそういうところがあるのだ。忘れるというよりも記憶からその部分だけ上手く消し飛んでるかのようなエピソードが起きる。僕はたまに「この人は定期的に宇宙人や何か秘密結社にでもさらわれて、何らかの記憶操作の手術を行われているのかもしれない」とさえ思うときがある。
さすがに息子がいることを忘れたことは無いのだが、最近「息子が遊んでくれなくなる年齢になったら犬を飼おうかと思って」とかのたまいている。僕はそれを断固阻止しようと思っている。
下手の横好きという言葉があるように、向いていないことほど人はそれをやりたがる。今回だって恐らく盛大に失敗するだろう。そもそもキノコなんてレベルが高いんじゃないのか?僕はその様をしっかり観察し「ほら、あなたは向いていないんだよ」ということをしっかりと諭さなければいけない。
それが今後彼女に飼育される者たちの生命を守ることに繋がるのだ。これはもはや僕に与えられた使命といえよう。
※現在、彼女に飼われている食虫植物。これは果たしてきちんと生命を維持出来ているのだろうか。