I WANT THE MOTORCYCLE

原チャリ生活

去年、一昨年と動かしていなかった我が家の原付バイクを動かしたくなった。きっかけは単純で、先日ひさしぶりにミッシェル・ガン・エレファントのGT400を聴いたからである。

I WANT THE MOTORCYCLE
青っぽい夜明け近く
そいつ またがるんだ
400の黒いやつで
トンネルは続くのさ
どっかいっちまえばいい

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT「GT400」より引用

この曲のリリースは2002年だったか。

あのバンド、というかどのロックンロールバンドにも音楽性の転機はあるわけだが、前作のアルバム「ギヤ・ブルーズ」がある意味デビューからの集大成だとすると、このGT400を含むアルバム「カサノバ・スネイク」がバンド第二期への踏み出しといったところだろうか。

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僕にとってのロックンロール

とはいっても、当時、僕の周りのロックファンには拒絶の反応の方が多かった印象である。まぁあれくらいの人気バンドが新しいことをやり始めると、古くからのファンから色々と批判されるのはロックバンドの常であり、逆にいえばそれはビッグネームになった証だったのだろう。

ところで僕は数年前に音楽を演奏したり作り出すことをやめた。今は好きな音楽しか聴いていないし、何だかプレイヤーだった頃よりも、単なる嗜好品として純粋に音楽を聴けている。

そんな僕が今でも欲するように聴いているロックンロールは、海外産だとレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン。国産だとこのミッシェル・ガン・エレファントあたりが「新しいバンド」のままだ。

つまり、00年代が僕のロックの折り返し地点だったのだろう。

復活の儀式

さて、三年ぶりに動かす僕の原付バイクの話である。

初日。まず、すっかり抜け切っているタイヤの空気を詰め、減っていたエンジンオイルを補充し、バッテリーを三時間ほど充電した。

だが、いまいちセルの回転が弱くて点火せず終了。

二日目。よくみたらバッテリー液も減っていた。すかさず補充し改めて充電。

今度はセルは勢いがあるのだがなかなか点火しない。カバーを外してプラグとエアクリーナーを掃除した。

そんなことを事務所の前で西日を浴びながらやってたら、息子の同級生の女の子たちに「なに、やってるの~?」と声を掛けられた。

この一時間後にようやくエンジンが掛かった。マフラーからは恐ろしいほどの白煙と臭いが出ている。そしてプスンという音と共に停止し、この日はもう目覚めることは無かった。

三日目。朝から一発でエンジンが掛かった。そのまま放置し、インターネットで予約していた自賠責保険の料金を近所のセブンイレブンまで支払いに行った。

帰宅後、保険加入の証明ステッカーをナンバープレートに貼り、さっそくガソリンを詰めに行き、これにて僕の家の1983年生まれのホンダ・イヴは3年ぶりに動き出すこととなった。

自由

近所を走りに行った。

たかが原付バイクなのだが、風の中を走るのがとても気持ちいい。

世の中にはたくさんの景色がある。散歩から見る景色、クルマからの景色、電車からの景色。それと同じようにバイクからしか見れない景色というものがある。それを3年ぶりに感じた僕はとても興奮していた。

これからこのホンダ・イブでたくさん出かけようと思う。そして小さなカメラでたくさん写真を撮るのだ。

夕方の下校時間、昨日の女の子たちが事務所を覗いて「ねぇ、動くようになった~?」と聞いてきた。

「ああ、動くよ。みる?」といって僕は事務所の外に行き、イブのエンジンを掛け、ちょっと家の前を走ってみせた。

「おお、かっこいい!」と言われて嬉しかったのは言うまでもない。

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