今月初めの記事でストリートスライダーズのアルバム「SCREW DRIVER」について書いて以来、毎日このアルバムを聴いている。たぶん89年にリリースされて以降の35年間で2000回は聴いてると思う。
僕は若い時から「ロックが好き」と言っておきながら、所持しているCDの枚数は少ない方だと思う。恐らく300枚くらいなのではなかろうか。これは同趣味人の中ではかなり少ないはず。
その代わり気に入ったものを繰り返し聴く節があるようで、中でもストリートスライダーズとローリングストーンズの気に入ったアルバムはそれぞれ1000回再生は余裕で超えている。一時期ずっぽりとのめり込んだバンドはたくさんあるが、上記に挙げた2つのバンドほど「今でもずっと聴いている」という感覚は無い。
自分でも「よく飽きないな」と感じたこともあったが、僕はどこかのタイミングでロック音楽に「新しさ」を求めなくなり、むしろ着慣れたコートのように、もしくは履き慣れた革靴のように「変わらぬもの」を欲していることに気づいた。コーラはいつ飲んでもあの頃と変わらぬ清涼感がいい。変わっては困るのだ。それと同じことなんだろう。
さて「SCREW DRIVER」の話に戻ろう。このアルバムにはロック音楽好きなら知っておかなきゃいけない名曲が収録されている。それが9曲目の『ありったけのコイン』だ。
ありったけコインかき集めて
のんだくれオマエとどこへ行こう
つかの間の夢でも探そうか
やってくる朝は相変わらずさ
乾いてる風が吹き抜ける街
Ah baby, baby どのくらいの願いごとが
Ah baby, baby 空の下にぶら下がってる
今夜オマエに何を買ってやろう
今夜オマエに何を見せてやろう
~THE STREET SLIDERS 「ありったけのコイン」より引用~
サルバドール・ダリの世界観のような舞台も相まって、このミュージックビデオはかなり秀逸だと僕は思う。言葉が次々と突き刺さってくる。
もともと僕はロック音楽にさほど歌詞を重視しない傾向にある。歌詞カードを見ながら聴くなんてこともあまり経験がない。
そんな僕でさえこの「ありったけのコイン」の歌詞はメロディとサウンドと融合して真っ直ぐに飛び込んでくるから響く。
これは「愛そのもの」の歌だろう。それは女性に向けてのものかもしれないし家族かもしれない。もしくは同性の友達かも知れない。
しかしそれはあまり問題ではないだろう。重要なのは「欲望と悲しみに包まれた代り映えのしないこの街で、自分の全てを絞り出してでもお前に夢を見せてあげたいんだ」という主人公の愛情表現なのである。
僕はこれほど「混じりっ気のない愛」を表現した曲を聴いたことが無い。それがこの「ありったけのコイン」が名曲と呼ばれる所以だと思う。
そしてスライダーズが好きな人なら、この「ありったけのコイン」を聴くとどうしても思い出してしまうもうひとつの曲がある。こちらも代表曲の「のら犬にさえなれない」だ。
最後のコインは 何に使うのさ
最後のコインで 何が買えるのさ
遊び過ぎた夜は いつも誰かを想ってる
Baby,のら犬にさえなれないぜ
~THE STREET SLIDERS 「のら犬にさえなれない」より引用~
デビューアルバムに収録された「のら犬にさえなれない」。
この曲の中で、最後のコインで何が買えるのかもどう使うのかも見出せず街をさまよった主人公は、7枚目のオリジナルアルバムでありったけのコイン使ってオマエに夢をみせると答えを出した。
これはぞくぞくするものがあると思いませんか?ロック音楽は最高だ。