僕は恐らく…というかまず間違いなく少し古いタイプの価値観を持つ人間なのだと自覚していて、例えば商売だったり何かの組織運営に携わったときは普通に効率の良さや便利さを重視しますが、ことプライベートに関してはやや非効率や不便さを好む自分がいます。
例えば僕は写真を撮るのが趣味ですが、写真を撮ることだけで言えばiPhone一つあれば十分で、わざわざ撮影専用のカメラを持つことはありませんし、洋服にしたって、ただ効率と無駄の排除を求めるなら、ヨレたら躊躇なく買い替えられる洗えるスーツ一式と、デニムにTシャツにスニーカー、そしてダウンジャケットでもあれば一年中暮らしてはいけるでしょう。
でもワタシ、そういうのはもう一度生まれ変わらないと無理です。たぶん僕は無駄を愛し、ロマンを求めるタイプなのでしょう。なにより僕にとって大切なのは、必要不必要ではなく、好きか嫌いかを選択ができるかという世界なのです。
…とおじさんの自分語りはいいとして、そんな僕でも『現代という便利な時代に生まれてよかった!』と思うことがあります。それはインターネットがある世界、中でもYouTubeです。
例えばYouTubeに上げられている以下の動画、これは僕が10代半ばから好きな日本のロックンロールバンド、ザ・ストリート・スライダーズが89年にリリースした傑作アルバム「SCREW DRIVER」のオープニングナンバーである「風の街に生まれ」のミュージックビデオです。
僕が高校2年のときにリリースされたこのアルバムに僕はいろいろと影響されています。「ローリングストーンズで一番好きなアルバムは?」と聞かれたら「レット・イット・ブリード」と答えますが、同じようにスライダーズで…と聞かれたらSCREW DRIVERと答えるでしょう。
中でもこの「風の街に生まれ」の映像がとても好きでこれまで何十回と観たと思います。何がそんなに好きか?と問われれば、次々と映し出される真冬の海外のスナップめいたカットだと思います。
ところで昨年このMVが公式チャンネルの方でアップされ、それ以降もたびたび鑑賞してますが、ここにきて初めて気づいたことがありましてね。それはコメント欄で知ったのですが、高校生の時から海外だと思い込んでいたこのロケ地が、なんと東京の福生市というではありませんか。
東京は若い頃に高円寺という街に7年住んでいました。高円寺から福生には1時間も電車に乗ってれば着くのに、僕は一度も行ったことがありません。
ご存じの方も多いように福生は横田基地があるところです。ですので街並みにアメリカがブレンドされています。あのMVは今から35年前に撮られたものなので、そのブレンド具合いが現在ではどうなってるのかわかりませんが、俄然、福生市に興味が湧いてきました。いつか必ず冬の福生に行こうと決めました。もちろんカメラ片手に。
…といったふうに、インターネットが無ければ、僕はあのMVのロケ地が海外だと思い込んでいたままの可能性が高い。逆に言えば、インターネットのおかげで東京のはずれに存在する福生という街に足を運んでみたいと思うようになった。これはわりと素晴らしいことなんじゃないかと思います。
あともうひとつわかったのはあれですね。結局僕が写真を撮って遊んでるのは、この動画に出てくるようなカットがすごく好きで、自分が生まれた町でそれをひとつでも多く集めたいんでしょうね。
ロックミュージックのMVを連想させるような写真。
ロックアルバムのジャケットに使われているような写真。
ロックミュージックの歌詞の世界のような写真。
「あー、こういうのなんだな」と改めて気づかせてくれたインターネット、そしてYouTubeには改めて感謝したいですね。