今年の正月、突然ギターが欲しくなった。フォークギター、今風に言うとアコースティックギター。特に古い時代のヤマハのギターが欲しくなった。
数年前までやってたバンドでギタリストだったT君。彼が持ってたアコースティックギターがそんな古い時代のヤマハギターだった。とても弾きやすく、そして荒っぽい大きな音がした。あんなギターがいい。
最初、FacebookとかTwitterなどのSNSを使い「誰か使ってない古いヤマハのアコギを1万円以内で譲ってくれませんか?」と友人に呼びかけようとしたのだが、せっかく応じてくれたのに気に入らなくて「いらない」と言うのも嫌なのでやめた。
結局メルカリで探した。いくら安くても「押し入れから出てきました。おじいちゃんが使ってたみたいです」みたいなのは避け、マニアっぽい人の出品で、現在でも弾かれていて弦高の数値などもきちんと記載されているモノを選んだ。ヤマハのFG-150Fという70年代のギターだ。9200円だった。
そのギターは二日後には僕の自宅に届いた。それ以来、毎晩のように弾いている。初日や二日目はすぐに指や手首が痛くなったがすぐに慣れた。
それにしても、こんなにギターという楽器が楽しいものだったとは。
バンドマンだった時にもギターはよく弾いていた。でも、それは曲を作るときだったり、作った曲をスタジオでメンバーに聴かせたりするのが目的だったから、特段面白いというものでもなかった。あくまで道具としてのギターだった。
でも、このFG-150Fが届いてからは本当に楽しく弾いている。中学を卒業した春休みに初めて買ったエレキギターでブルーハーツのリンダ・リンダを毎晩練習したように、今の僕は古いヤマハのギターで福山雅治の桜坂を練習している。脳がもう年老いてるので覚えてもすぐ忘れてしまいなかなか前に進まないが、それでも少しずつ出来るようになっていく感覚がとても楽しい。
別に誰かの前で披露する予定も無いし、このギターと共にいずれは人前で演奏する人間になろうなんて野望も無い。ただただ、指で弾いたものが、耳とお腹を伝って身体に染み込んでいく感覚が楽しいだけだ。
でも、音楽や楽器なんてそんなものだろう。カメラだって写真家やプロカメラマンだけのために存在しているわけではないのと同じように、ギターだってちょっとした楽しみとして音楽に接したい人のために存在しているのだ。むしろその需要の方が多いだろう。
今夜もかつて好きだったロックンロールや歌謡曲をさんざん弾こう。そしてその後、桜坂を練習しよう。
ギターは楽しい。そしてやはり音楽はとても素晴らしい。