息子が10歳になった。
彼が生まれた日もこんな天気だった。時折、雪もちらついていた。
分娩室へ行く妻を見送り、ようやく一息ついた僕はコンビニで買ったパスタを食べながら待っていた。パスタを半分食べたところで看護師さんが迎えに来てご対面した。
映画やドラマでよく見るような激しく産声を上げてる姿ではなく、静かな様子で僕の顔を見るなり右手を上げた彼の姿は、まるで「お、君がお父さんか。これからよろしくな」とでもいいたげなおっさんみたいだった。
あれから10年経った。ということは僕も人の親になって10年になったということだ。自分の誕生日もめでたいが、子育てが続いている間は息子が生まれた日、そして自分が親になった日の方が遥かにめでたい気がする。
今朝はそんなことを考えながら登校する子ども達を眺めていた。みんなせがれと同じように生まれ、彼らの親御さんだって僕と同じように思うことがきっとあったのだ。
下校時、いつもの同級生の女子たちが事務所を覗いてきた。息子に「おめでとうと言ったよ!」とのこと。あいつめ、自分で言いふらしたのか。