四月の半ばのこと。オガー夫婦共通の友人(女性)から電話があり「6月に自分が勤める銀行のギャラリースペースで写真展やりませんか?」というお話を頂きました。
「んなこといったって、おれの写真なんて散歩しながら撮ってる泥臭い写真ばっかりなんで、銀行様にふさわしいものなんてありませんよ」
・・・と言ったのだが、結構頑張って食いついてくれたのでOKしました。元々僕のinstagramやブログで写真を見てくれてた人だったし、まぁ展示にあたる条件もクリアしたから話を持ってきてくれたのでしょう。
まぁ正直、写真データなら山ほどあります。冗談抜きで万枚分近くはあるかも。だからはっきり言うけど、そんなに撮ってりゃ誰だってまともなのが何枚かあるはず。
だから軽い気持ちでオーケーしました。それに銀行ってのがいいですねぇ。銀行常連のお金持ちのおばあさんなんかが「まぁ!この写真素敵だねぇ!1枚10万円で買うわよ!」という話になるかもしれないし。
ぐへへ。
報告した
というわけでお茶をすすっている妻、いや鬼に報告しました。
僕「これこれこうで、おれ写真展やるからさ~。ちょっと手伝ってくれない?」
鬼「どうやって展示するんだい?」
僕「なんか展示ボードみたいなのはあるみたいだから、A4プリントでもして画鋲で貼るよ」
鬼「展示をナメてるのかい?」
妻はグループ展だの何だの過去に展示の経験があるし、写真館勤めのときは業務でディスプレイ作りとか当たり前のようにやってたみたいです。その経験からちゃんとしたルールというかセオリーみたいなのは守らねばいかんと言うのです。
僕「えー!準備とか自分でお金出してやるの?経費とか普通お店が出してくれるんじゃないの?」
妻「あんたどこの売れっ子だよ。そもそも芸術とはお金がかかるもんなのだよ!」
自腹切ってまで自分で展示をやるいう感覚がイマイチわかりませんが、まぁ考えてみればアマチュアバンドのときだって人を呼べなきゃそんなもんだし仕方ないか。
それでもいまいち面倒くさくなった僕は「Aさんにやっぱやめるって言おうかな(笑)」と妻に告げると・・・
鬼「いや、無理してでもやった方がいい。こういうことは滅多に出来るものじゃない。」
とピシャリとやられてしまい決行することにしました。
準備の準備
それから一ヶ月経ちAさんか連絡が来ました。「どうですか?準備進んでます?私も何か手伝いましょうか?」
正直言って何ひとつ進んでいません。だから慌ててやることにしました。とりあえずAさんにはボード2枚を準備してもらうことと、タイトルと僕の肩書きを決めるから明日また連絡します、と告げました。
僕「あの~、Aさんがタイトル作るんで教えてと言うんですけど」
妻「・・・酒田独歩にしよう。国木田独歩や『宮本、独歩。』のアレだ」
僕「わかりました。Aさんに酒田独歩で印刷してくれと伝えます」
妻「いや、手書きにしよう。息子に書かせよう。ちょうどよく習字道具あるし。あとはボードの寸法を聞いておいて。レイアウトは私がやる。」
まさに家内制手工業の世界であります。いったいどうなっちまうのでしょうか?
感動した
とりあえず肝心の写真を選ばなくちゃ話にならないので、膨大なデータ数の海に飛び込むことに。中には「なんでこんなの撮ったのだ?」というのも多くありました。
まずは銀行という、一般の方々が足を運ぶ展示会場ということを前提にセレクトし、80枚程度に絞りました。
やっぱね、写真なんぞに特別興味を持ってない人はね、つい3~4年前までの僕がそうであったように「何が写っているか?」というのがまず重要だと思うんですよ。
写真趣味の人相手だと「この影のトーンが」とか「偶然か必然かわからないこの構図が」とか講釈垂れやすいのがいいんですけど、まぁそんなの一般の方が見てもわけがわからない写真でお終いですからね。だからしっかりと「何が写っていてどのあたりで撮ったのか?」というのを重点的に選んだつもりです。
その80数枚から、プロデューサーに指示された通り横位置の写真が16枚、縦位置の写真が15枚の、計31枚を最終的に決定。
ハレパネという5mm厚のパネルを買い、A4プリントした写真をそこに1枚1枚貼り付けて余りスペースをカットして終了。ちなみに僕はぶきっちょなので妻が全部一人でやりました。
その完成品を手にしたときに僕は感動しました。
「これは俺の作品だ!!」
いやね、ほら最近はデジタルカメラだし、鑑賞はモニターで保存はハードディスクでしょ?下手すればスマホで撮った写真なんてずっとそのままじゃないですか。
僕はもともとプリントが好きなんで友だちにあげるのとかはなるべくそうするんですけど、A4サイズのプリントはたぶん初めてだったし、下地にパネルがあるだけで作品感がとてつもなく増すんですよね。
いやぁそれにしてもデジタルデータが物質になるとこんなに愛着が湧くとはね。ハッキリ言いますと、おれの写真はかっこいいですよ。
と、言えるくらい何ともいえない気分になりました。
いざ展示へ
6月1日月曜日から展示予定なので、前週末の5月30日土曜日に展示に取り掛かりました。途中、ホームセンターで細いクギ、というかピンみたいなのを買ってね。
あとは妻が決めた展示順の指示書をみながらカナヅチでカンカンと打ち込みます。二時間近く掛かったかな。腰が痛くなりました。
これが最終形態でございます。
息子には3枚書いてもらいました。最終決定も彼自身です。「このかすれたところがかっこいいじゃないか」と言うのでコレ。
それにしても彼は習字が苦手ではないけど、特段得意じゃないと思います。いつも「銀」止まりだし。
けれども「おれは習字がうまい」と言い切ります。あの基本的に何においても自己評価が高い性格は妻譲りだと思います。
というわけで
準備から展示まで頑張りました。6月1杯はこのままのはずですので、お近くの方はぜひ足を運んでみてください。会場は荘内銀行酒田北支店です。SNSやブログで写真を見る感覚とはまるで違いますよ。これは自信を持って言えます。
じつはこれまで僕は展示に興味が無かったんですよ。いつか写真集を作りたいと思ってはいまして、そのときの販促のためにだったらやらなきゃいかんなとは考えてましたが。
いやいや、展示はいいですね。出来れば会場に一日中座って、見てくれた人とお話したいくらいですわ。
よくSNSで「#写真を撮る人と繋がりたい」というハッシュタグを見かけますよね?
僕ね、ああいうのがあまり理解できないというか、むしろ写真を撮ってない人と繋がりたいんですよね。「おれは写真を撮るけど、あなたは○○で、お互いに無いものを補い合った方が面白いんじゃないすか?」みたいな感覚ですかね。
今回もそういった写真を撮るのが好きな人たちだけが集うような場所での展示だったら、もしかすると断ったかもしれません。
そういう意味で銀行のギャラリーってのは最高ですよ。いろんな人に見てもらえるはずですから。
いやぁ写真っていいですね。ではまた。