全力で息子を谷底に突き落とした話

昨日は祭日。作文の宿題を前に手も足も出なくなっている息子が僕にこう言った。

「父ちゃん、俺はもうたぶん父ちゃんより足が速いぜ。これから競争しない?」

コイツは最近僕を舐めくさり始めた。習っているピアノや水泳はもちろん僕より出来るし、テレビゲームもだんだん負けるようなことも出てきた。

だがしかし、走るなんてシンプルな運動においてまだ負けるわけにはいかない。長距離走はなかなか速いが、100m走にいたっては学年男子でせいぜい真ん中程度だ。

しかもだ。恐らく作文のネタにする気だろう。こいつはよく僕をネタにする。僕は保護者の中でも学校の職員室を頻繁に訪れる方だが、なぜか先生方にいろんなことがバレている。

「今日は体育の日だったので、学校のグラウンドでお父さんと競争しました。僕が余裕で勝ちました。嬉しかったです」

絶対にこんなことを書くつもりなのだ。冗談じゃない。「あら、オガーさん。息子さんと競争して負けたんですってねフフフフ」なんて先生方に言われたらたまらん。

いくらなんでも小3に負けるはずがない。僕は挑戦を快諾し、妻を含め3人でグラウンドに向かった。

グラウンドには4人ほど野球小僧がいた。こっちをみて手を振ってるのまでいる。だれだあいつは?メガネかけていないからみえん。

というか、もはやこの学区において僕のプライバシーなんてない。さっきちょうど下校時間に学校の前をクルマで通ったら「オガーパパー!!!」と呼ばれた。なんであいつらは運転している僕がわかるんだ?

野球小僧にまで僕の失態を晒すわけにはいかない。いよいよ絶対に負けられない戦いになってきた。

十分すぎるほど準備運動をした。僕くらいの年齢になるとありえない事故が発生するからだ。ウソだと思うなら下の再生リストを最後までみてみるがよい。

よーいどん。夕暮れのグラウンドで中年と少年の競走が始まった。

僕の左足が途中でピキっとなった。だが、最後まで走りきり3馬身差くらいで勝った。父の威厳は保たれた。

「ばぁかばぁか。おまえチビのくせに俺に勝てると思っちゃったのか?なめんじゃねーよがきんちょのくせによー。10年はえーよ。うぇーい、だせぇだっせぇぇぇぇぇ」

思いっきり罵った。気持ちいいくらい罵った。最高に気持ちよかった。

そして彼はブランコで泣いていた。これでよい。百獣の王は我が子を全力で谷底へ落とすのだ。

そして本日、僕はまともに歩けていない。いててててて。

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