僕と同年代あたりの人は驚くかもしれないが、現代の中学生の部活動は保護者のサポート無しでは成り立たない。
昔と違って遠征や大会で数台のクルマで乗り合っていくことは保安上不可だし、そもそも土日の活動は学校ではなく保護者管理の元で行うというシステムになっている。
昔であれば、例えば平日の場合、朝一度送り出してしまえばほっておいても日が暮れた頃に腹を空かして帰って来ただろうし、大会や練習試合があれば親の中で当番でも決めて数台のクルマで送迎し、帰ってきた子に結果を聞いたりするのみだったのがいわゆる中学生以上の部活動だったのだろう。
現代においてそういう形は変化した。でも、少なくとも僕にとってはいい時代になったなと感じる。剣道を通じて我が子はもちろん、仲間のみんなの成長に間近で接することが出来てとても楽しいからだ。今の僕にとってPTA活動や剣道を通じて若い人と関わっていけること以上に楽しいことは無い。
さて、うちの剣士たちは今度の日曜日に大一番を迎える。いわゆる中体連の地区総体である。客観的に直近の大会成績を参考にした場合、うちの男子チームは本命視されるだろう。若いチーム構成だからこれまではいつもチャレンジャー精神でやってこれた。それがここに来て初めて本命馬となるわけだから、それなりにプレッシャーを感じてるのが見て取れる。
もし、中学剣道にランキングみたいなものがあれば、ここまでの大会成績上、彼らはいま県内50や60チームある中で3位ないし4位…低く見積もっても8位以内に位置づけられるだろう。けれどもそういった実績を以ってしても、この地区の5チームの中で1位になり、来月の県大会にコマを進めるのが全く容易ではないことを重々知っているのだ。
息子もややナーバスになっている。散髪に行きたがったり、ルーチンワークである大会前日の神社参りも約束してきた。竹刀や防具の消耗品のチェックも普段なら僕がこっそりやってるが、今回は自らお願いしてきた。
親として、とてもいい傾向だと感じる。期待を受け、それに応えようとすること。重圧の中で力を発揮しようとすること。いま彼らはお金では買えないことをたくさん経験している。
土曜の練習の後、汗だくになった我々親子は自宅に戻り一緒にシャワーを浴びた。
「気楽にやれよ。お前らはまだ2年生なんだから来年もう一度あるだろうよ」
「そうじゃないんだよ。3年生たちともう少しだけ一緒に剣道をやっていたいんだよね」
おお、そうか。なるほどな。負けたら3年生は引退だもんな。お前、なかなかいい仲間を持ったな。