【森山大道】ありふれた被写体とありふれていない写真【Tokyo】

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別に写真撮影が趣味じゃない人にまでその名が通っている方々といえば、土門拳はもちろん、荒木経惟森山大道あたりだろうか?

ロック界隈でいえば「誰でも知っている」という意味でビートルズやストーンズ、レッドツェッペリンみたいなポジションであり、直接的、間接的問わず、写真を撮るのが好きな人々は何かしら影響を受けているはずである。

僕はといえば、一番好きな写真撮影はPTAの仕事で小学校の活動を撮ることであるが、プライベートという意味では日常スナップ、特に街撮りがとても好きである。

ときどきSNSなどで「路上写真を好む人の気持ちがよくわからない」というコメントを見かけるが、僕から言わせれば車をちょっと停めて毎回同じようなところで山や夕陽を撮る人の気持ちがわからない。

つまりそんなのは個人の欲望センサーの違いなだけで、実際路上での写真撮影を好む人は昔から存在する。今でいうストリートスナップってやつだ。

さて、その街撮りであるが、先にあげた三人の中では森山さんが代表格で、彼は80歳を超えた今でも路上スナップを撮り続けている。

活動暦が60年以上でリリースした写真集は数え切れない。だから僕も全ての作品は見たことがないが、昨年夏に発売された「Tokyo」という写真集はどうしても見たくなり購入した。

というのも、写真集の紹介文を読むとロケ地が東京のほぼ名所で、それはもうまるで観光ガイドブックみたいなのだ。

森山大道といえば裏通り、雑踏、夜、猥雑、野良犬視点。そういった単語が浮かぶのだが、いったいどうして浅草、明治神宮、西新宿などを撮る気になったのだろうか。というより、彼がそういう場所で写真を撮ったらどうなるのだろうか。それがどうしても気になって仕方が無かったのである。

目を通した感想を述べる。やはり森山大道は森山大道であった。けして若い頃のような食い入るような視点で撮る迫力に満ちた写真ではない。いつからか彼は時流に逆らわずに撮っていて、それはもう極みの粋である。剣道でいえば、達人が使う面返し胴みたいなものだ。

そもそも写真を趣味にするとまず「上手に撮りたい」に陥る。次に「他人とは違う写真を撮りたい」にいく。でもこの2つのコースを辿っても結局先にはあまり面白いものは無い。「お上手な写真ですね」「切り取り方が独特ですね」で終わってしまう。

そこでふん詰まってしまう人も多いし、ふん詰まっていることに気づかず、お上手で奇をてらった視点の作品を量産し続ける人もいる。けれども僕はそこに長くいたくないからいろいろとあがいてやってるのだが、今回の写真集をみて、ちょっと目から鱗が落ちた気がする。

とりあえず僕は「こんなもん撮っても仕方ないな」というのはやめようと思う。

これからは山も夕陽も海も山居倉庫も撮ろう。撮ったのち「なんだ。この撮りつくされた感じに溢れる写真は。」と思ったならば、それは被写体が悪いのではなく、僕の感性がありふれてるだけなのだ。

そしたらまた考えよう。まだまだ写真の世界には先があるなぁ。僕がいるのはまだ入り口からちょっと入っただけのところなのだろうか。

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