【55日目】早朝交差点観察日記

早朝交差点観察日記

今朝の早朝交差点はいいことがあった。

とある登校班のいつも一番後ろを歩いてるその女の子は、日ごろ僕の前を恥ずかしそうに下を向いて通過する。ところが今朝初めて顔をこっちに向け挨拶を返してくれた。

聞こえないほど小さな声だったが、確かに口元が「おはようございます」と言っていた。それで十分だ。誰もがみんな底抜けの明るい元気な声で挨拶なんか出来るわけではない。彼女が表示してくれた意思は確かにこちらに伝わった。そう、大切なのは意思伝達なのである。

というわけでそのまま気分良く絵本読み聞かせのボランティアに向かうことが出来た。本日はグリム童話の「星の銀貨」。

というのも、昨晩仕事から帰ってきた妻が「スノードームみたいな雪が降ってるよ」というので、外を見ると確かに酒田では珍しく真っ直ぐ上から下へ雪が降っていた。僕は写真が撮りたくなり、夕食後に近所の山居倉庫まで出向いて撮ってきた。

帰ってきて画像を確認するとキラキラした雪がとても綺麗だった。その様子がまるで星の銀貨のラストシーンみたいだったのでこれを選んだ。

今日の担当は2年生。教室に入るとあちこちから声が飛ぶ。

「知ってるー。カメラマンだー」

「違うよー。ひなづる(我が校の広報)の人だよー」

・・・なかなかの有名人である。

さて星の銀貨は、とある女の子が自身が貧しいのにもかかわらず、道で出会う同じように貧しい人々が欲しがるものを全て与え、とうとう最後には文字通り素寒貧になったところで神様が銀貨を天から降らせてくれたという物語である。

とてもキリスト教の色が強い話なので、正直、現代日本ではピンとこないかもしれないがそれを承知で読み聞かせた。子どもの頃に知っておいた方がいいという物語はある。僕なりに毎回そういうものを選んでるつもりだ。

終わった後に雑談を楽しみ、そしてみんなで挨拶を交わした後、僕は教室を出て行こうとしたそのとき一人の男の子が僕に駆け寄りこう言った。

「●▲■●頑張ってください!」

残念ながら最初の方は聞き取れなかった。でも、しっかりと彼の意思は伝わった。僕は「ありがとう」と告げ教室を出た。

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